活動研究

今年度の研究について

1.研究主題について

好きやねん 大阪
人・地域から学び 未知の時代を生き抜く力を育成する

 

令和という新しい時代になり、東京オリンピックや大阪万博の開催を控えて希望に胸を膨らませていた。しかし、これまでに経験したことがない時間を過ごすことになった。瞬く間に世界各国に広がった新型コロナウイルス感染症、経験したことがない豪雨災害、そして急速に進む地球温暖化。新しい生活様式への対応とともに、学校教育にも一気にリモート授業が導入された。身近な人と距離を置くことが強く求められ、他者と関わること、地域で様々な体験を重ねることが制限され、友達との話し合い活動もままならない状況にある。生活科や総合的な学習の実践を重ねてきた私たちにとっては、改めて「人とのつながりや体験を通し、他者の思いや考えを受け止めながら確かな学びを深める」ことの重要性を実感できた時期でもあった。子ども達の健全な育成をめざして教育に携わる者として、予測困難な時代をたくましく生き抜く力を育まなければならないと強く感じている。
令和2年度から全面実施となった新学習指導要領では、子ども達が未来社会を切り拓くための資質・能力を明確にすること、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改革を推進すること、教育活動の質を向上させ、学習効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを推進することが求められている。
そこで、大阪大会では、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、3つの視点から研究に取り組むことにした。一つ目は、「生活科」や「総合的な学習の時間」(以下、「総合」とする)の学習を通して育む「資質・能力」を具体化すること。2つ目は、「生活科・総合」を軸に他の教科や学習活動をつなぐ「カリキュラム・マネジメント」に取り組むこと。3つめは、「資質・能力」を育む生活科・総合の授業づくりに取り組み、子ども自身が学びを実感できる実践を進めることである。
新学習指導要領に示された方向を踏まえ、生活科や総合の実践を進める中で、地域の学習材の価値を見直し、人と人との関係を結び直すことで、子ども達が身近な課題を解決し、「自分はこんなことがしてみたい」「大きくなったら、あんな大人になりたい」など、夢と希望のあふれる未来を描いてほしいと願っている。そこで、目指す子ども像を「身近な出来事や問題に進んで関わり、思いや願いを実現しようとする子ども」とし、研究テーマを設定した。
 

目指す子ども像:
地域や社会と積極的に関わり他者と協働しながら学び続けようとする子ども
 
 

2.研究の内容

「自分のことが好き」と思う気持ちや「自分が大切にしている家族、友達、身近な人」を気遣う気持ち、「身の回りにあるものや町、出来事や思い出」を大事に思う気持ちを育むことは、「他者」を理解することへとつながると考えている。ここでいう「他者」には、自分たちの町で働く海外からの労働者や、観光客、日本に住んで誰かのために力を発揮している人も含まれている。これらの外国の人の立場から自分たちの住む日本や都市、町を見つめたときに、「世界の中の日本」が見えてくると考えた。
また、人々の思いや願いにさまざまな違いがあることにも気付かされ、それらのことを考える時が来るのではないだろうか。だからこそ、生活科や総合の学習では、地域にある学習材の価値を見出し、地域に住む多様な人々と関わることに意義があると考えた。
「好きやねん 大阪」には改めて身近な社会に目を向けてほしいという我々の願いが込められている。
 
 

3.研究の方法

未知の時代を生き抜く力を育てるためには、児童に付けたい資質・能力を具体化することが重要である。具体化された資質・能力の育成を目指すために、カリキュラム・マネジメントに取り組み、「主体的・対話的で深い学び」な授業づくりを行う必要があると考えた。そこで、以下の3つの視点で研究を進めることにした。
 
 

研究主題を実現するための3つの柱
 

研究主題を実現するための3つの柱の図

研究主題を実現するための3つの柱の図

【視点1 資質・能力の具体化】
   各学校における教育目標を踏まえて目指す子ども像を明確にし、各学校で育成を目指す資質・能力を教職員全員で整理する。整理された資質・能力を基に、各学年の児童の実態に応じた育みたい資質・能力を具体化し、単元や題材など内容や時間のまとまりの中で培われるようにする。資質・能力を具体化することで、単元や1回1回の授業の指導内容が明確になり、学習の質が一層高まって「主体的・対話的で深い学び」が実現できる。また、具体化された資質・能力を基に、児童の記述や蓄積されたポートフォリオなどから見取る(評価する)こともできる。
【視点2 学びをつなぐカリキュラム・マネジメント】
   目指す子ども像、育みたい資質・能力を具体化し、それを育成するために教科学習で培った知識や技能、体験から得られた気付き、そして、まちの人(ゲストティーチャー)や地域と意図的につなぐカリキュラムを生活科・総合的な学習の時間を軸にデザインする。

【視点3 資質・能力を育む授業づくり】
   授業の中でルーブリック(具体的な到達目標)を共有し、思考ツールを活用しながら主体的で対話的な学びを行い、学習の終末でルーブリックを基に自らの学びを振り返り、学びを確かなものにしたり、新たな価値に気付いたりできるようにする。

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